2025/10/30 10:38


コーヒーの味を決める“精製方法”の基本 — ウォッシュド・ナチュラル・ハニー・スマトラ式

はじめに

コーヒーの味を決めるのは、産地や焙煎だけではありません。

実は「精製方法」──つまり、収穫したコーヒーチェリーから豆を取り出す工程──が、

香りや味わいを大きく左右します。


同じ品種・同じ焙煎度でも、精製方法が違えばまるで別のコーヒーのような表情を見せてくれます。

今回は、代表的な4つの精製方法を紹介します。


■ ウォッシュド(Washed / 水洗式)

クリーンで透明感のある味わい。世界標準の精製法


果肉を除去したあと、水を使って発酵・洗浄する方法です。

ミューシレージ(粘液質)を発酵で落とすことで、雑味がなく澄んだ味わいに仕上がります。


味わいの特徴:

・透明感があり、酸味が明るい

・果実の輪郭がくっきり

・後味がクリーンで軽やか


代表的な産地:

エチオピア、グアテマラ、ケニアなど。


よしむら珈琲では、「ケニア マサイ AA」や「グアテマラ」がこのタイプ。
焙煎では、酸のキレを活かしつつ、甘みを引き出す火入れを意識しています。


■ ナチュラル(Natural / 非水洗式)

果実感と甘さが際立つ、ワインのようなコーヒー


収穫したチェリーを果肉ごと天日乾燥させ、のちに脱穀する方法です。

果肉の糖分が豆に移るため、甘みと香りが豊かで、個性的な味わいになります。


味わいの特徴:

・ベリーやワインのような香り

・甘く濃厚なボディ

・豊かな余韻


代表的な産地:

ブラジル、エチオピア南部など。


よしむら珈琲の「エチオピア シダモ ナチュラル」はこのタイプ。
果実のような華やかさを感じられる、秋冬にもぴったりのコーヒーです。


■ ハニー(Honey / パルプドナチュラル)

ナチュラルとウォッシュドの“いいとこ取り”


果肉を除去したあと、ミューシレージを一部残したまま乾燥させる方法。

粘液質の残し具合によって、イエローハニー・レッドハニー・ブラックハニーなどに分かれます。


味わいの特徴:

・優しい甘みとコク

・すっきりしつつもまろやか

・ウォッシュドより甘く、ナチュラルよりクリーン


代表的な産地:

コスタリカ、エルサルバドルなど。


よしむら珈琲でもテスト焙煎を進めている精製。
焙煎の熱を少し穏やかに入れると、まるで“はちみつのような余韻”が楽しめます。


■ スマトラ式(Wet-Hulled / スマトラプロセス)

タナレーベルでおなじみ。力強さと深みの象徴


インドネシア独特の精製法で、湿潤な気候に合わせて発展した手法。

果肉を除去した後、半乾き(含水率30〜40%)の状態で脱穀し、

その後もう一度乾燥させます。


この独特の工程が、スパイシーで力強い香りと深いコクを生み出します。


味わいの特徴:

・アーシー(大地のような)香り

・カカオ・ハーブ・スパイス感

・重厚なボディと長い余韻


よしむら珈琲の「マンデリン シナール G1」がこのタイプ。
焙煎でしっかり火を入れると、厚みと奥行きのある“男前の一杯”に仕上がります。
タナレーベルでおなじみのあの風味は、まさにスマトラ式ならではです。


■ まとめ:精製は「豆の個性を決める裏方」

同じコーヒーでも、精製が違えば味も香りも全く変わります。

それぞれの方法には、その土地の気候・文化・職人の知恵が詰まっています。


よしむら珈琲では、精製ごとの個性を最大限に引き出すため、
焙煎温度・時間・火の入り方を一つひとつ調整しています。
豆の声を聴き、その個性を焙煎で“完成させる”のが、僕たちの仕事です。


次回予告:

次回は、いま世界で注目されている新しい精製法、
「アナエロビック」「カーボニック」「インフューズド」など、
発酵をデザインする“次世代の精製”を紹介します。