2025/11/06 10:00



コーヒーの新しい精製法 — アナエロビック・カーボニック・インフューズド・ハニープロセスの進化

はじめに

近年、コーヒーの世界では「発酵をデザインする」精製が注目を集めています。

従来のウォッシュドやナチュラルに加え、

アナエロビック(嫌気発酵) や カーボニック・マセレーション(炭酸ガス発酵)、

さらに インフューズド・ファーメンテーション など、

まるでワイン造りのように発酵をコントロールする新しい試みが増えています。


この記事では、そんな“ネクストジェネレーション精製”を4つ紹介します。


■ アナエロビック・ファーメンテーション(Anaerobic Fermentation)

酸素を遮断して行う“密閉発酵”

— コーヒーに新しい複雑さをもたらす手法


密閉タンク内で酸素を遮断し、果肉やミューシレージごと発酵させる方法。

通常の発酵よりも微生物の活動が穏やかになり、

乳酸やエステルなどの香り成分がゆっくり生成されます。


結果として、ワインのように芳醇で立体的な香りを生み出すのが特徴です。


味わいの特徴:

・発酵由来のスパイシーで複雑な香り

・甘みと酸味の融合

・冷めるとさらに香りが開く


よしむら珈琲でも、この手法の豆を試験焙煎中。

火の入りをやや浅めに調整することで、アロマを生かす焙煎に仕上げています。


■ カーボニック・マセレーション(Carbonic Maceration)

ワインの製法を応用した“炭酸ガス発酵”

— 芳醇でトロピカルな香りが魅力


フランスの赤ワイン造り(ボジョレ・ヌーヴォー)から着想を得た精製法。

タンク内に二酸化炭素を充満させ、酸素を追い出した状態で発酵を進めます。


果実内部で細胞分解が起き、トロピカルフルーツやラムのような香りが生まれます。


味わいの特徴:

・フルーティーで華やか

・トロピカルでリッチな香り

・酸味がまろやかに整う


近年はエルサルバドルやコロンビアなど、実験的な農園で盛んに導入されています。

熟度の高いチェリーと発酵管理の精度が、仕上がりを大きく左右します。


■ インフューズド・ファーメンテーション(Infused Fermentation)

香りを“設計”する時代へ

— フレーバーを加える革新的アプローチ


発酵過程で、シナモン、オレンジピール、カカオなどの天然素材を加え、

豆に香り成分を移す手法。

コーヒーを“香りのキャンバス”として再構築する、革新的な考え方です。


味わいの特徴:

・まるでデザートのような香り

・スイートで個性的な仕上がり

・香りが強く印象に残る


「純粋なコーヒーではない」として議論を呼ぶ一方で、

“体験としてのコーヒー”を広げるきっかけにもなっています。


■ アナエロビック × ハニー(Anaerobic Honey)

伝統と革新の融合。

— 自然な甘み × 発酵の複雑さ


ハニー精製にアナエロビック発酵を組み合わせた手法。

ミューシレージを残したまま密閉発酵を行うことで、

はちみつのような甘さとスパイス感が両立した味わいになります。


味わいの特徴:

・甘みと酸味の調和

・滑らかな口当たり

・発酵の奥行きを感じる余韻


エルサルバドルやコスタリカのマイクロロットで人気が高く、

「ハニーの透明感 × アナエロの複雑さ」が融合した新世代の精製です。


■ まとめ:発酵をデザインする時代へ

コーヒーは今、“農作物”から“クラフト”へと進化しています。

精製は単なる工程ではなく、味を創造するアート。


同じチェリーでも、発酵環境・時間・温度・圧力によって全く異なる表情を見せます。

そして、その一粒一粒を最適に焙煎して完成させるのが、ロースターの役目です。


よしむら珈琲では、

これからも“焙煎で引き出せる発酵の可能性”を追求していきます。